障害年金の1級、2級を受給中で、配偶者や子がいる場合には加給年金や子の加算という加算される年金があります。この加給年金についての支給要件や請求忘れでもらえていなかった事例についてご紹介いたします。きちんと受給されている方は関係ありませんが、あっ自分は該当するかも?という方は一度確認してみる機会になれば幸いです。

目次

加給年金額と子の加算額

1級・2級の障害年金受給者に、配偶者や子がいる場合に
加算される年金です。  ※金額はいずれも令和4年度価格
  
 配偶者・・・夫に対する妻、妻に対する夫
 加給年金額(223,800円/年)
 支給は配偶者が65歳になるまで

 子・・・・・加算の対象になる子は18歳になった後の
       最初の3月31日までの子
       20歳未満で障害等級1級・2級の障害状態にある子
 子の加算2人まで(223,800円/年)
 子の加算3人目から(74,600円/年)
 支給は子が18歳になった後の最初の3月31日まで、
 障害等級1級・2級の障害状態にある子は20歳になるまで
 

 上記に該当する場合に加算の可能性があります。
 子がいるけどすでに20歳以上の場合は子の加算はありません。
 
 配偶者は婚姻の届出をしていない事実婚も含まれます。
 子は養子縁組をした子も含まれます。

 

支給要件

加給年金が支給されるための支給要件があります。

①生計同一関係(配偶者、子と生計を共にしていること)
②収入要件(配偶者、子の収入が要件の範囲内であること)

①②両方の要件をクリアして加給年金等が支給されます。


なお、支給要件をクリアしても
配偶者が20年以上の年金受給権者の場合は加給年金は
全額停止されます。


生計同一関係の確認

生計同一関係にある配偶者、子がいること。

同居している場合

通常は同居して生活を共にしていれば生計維持関係ありとされます。
住民票上同一であれば、その実態はどうであれ加給年金に関しては
問題なく受けることができます。

同居していない場合

同居していない場合は、別居の理由を問われます。
やむを得ない事情があって(単身赴任、親の介護、子の学業など)
別居している場合は、配偶者や子と生計同一であるとする
申立書により、受給者から配偶者や子への経済的援助の事実
を述べていきます。援助内容の確認ができる振込の記録などが
あれば、生計維持関係ありと認定される可能性はグッと高まります。

別居の理由がそれぞれ生計を別にするものである
(価値観の違いなどで別居し、経済的援助はなし)場合、
生計維持関係がないとして加給年金は認められません。

収入要件の確認

配偶者、子の年収が850万円(所得655.5万円)未満であること。
年収850万円以上の場合、加給年金等は支給されません。

年収850万円未満になった場合は?

請求時には850万円以上でも、その後850万円未満となった場合、
障害年金の加給年金に関しては、850万円未満になった時点で
あらためて加給年金の請求をすることができます。

請求時には収入要件で加給年金がもらえなかった・・・
現在は退職している、とか収入が下がっているという場合は、
請求可能か確認してみるといいでしょう。

事実婚の場合

婚姻の届はしていないけれど、夫婦と同様の関係(事実婚)の場合
も、加給年金は支給されます。

この場合も、事実婚であることと生計同一関係についての申立書で
それぞれの事実を述べていきます。
夫婦同然の事実が確認できるものを添付できれば、事実婚でも
加給年金は認められます。

加給年金のもらい忘れ

通常は、障害年金請求時に配偶者、子がいれば生計維持の申立ても
一緒に行うため加給年金のもらい忘れはありません。

しかし、等級変更等により障害年金請求時と事情が変わる
ケースもあり、その場合に加給年金のもらい忘れが発生します。

実際にあった事例をみていきます。
自分も当てはまると感じた場合、一度相談してみてください。

障害状態確認届で3級から2級に変更されたときの子の加算もれ

障害の状態を確認するために、診断書が1年、3年、5年ごとに
送付されるというのは、以前のブログでご紹介いたしました。

その障害状態確認届で、上位等級になると判断された場合は、
職権で等級変更がなされます。

この等級変更で3級から2級に変更された受給者に子の加算もれがありました。
5歳と9歳の子を持つ障害年金受給者です。
3級の障害年金では加給年金の支給ありませんが、2級に変更された時点で
子の加算2人分が支給されます。(223,800円×2人分=447,600円/年)

この方は、2年前に2級に変更されたおり、2年間、子の加算が支給されていませんでした。
過去の分も含めて、子の加算をもらう手続きをして2年分遡及され事なきを得ました。

受給当時の単身者から配偶者や子をもつようになったときの加給年金もれ

障害等級が2級以上の場合で、配偶者や子がいる場合に、
加給年金や子の加算が支給されます。

但し、単身者の場合は加算がありません。
この事例は、2級の障害年金受給時は単身者、
その後、婚姻により配偶者、子を持った事例です。

この方の場合は、8年前から年金受給しており、5年前に結婚、
その後、子を持ったという流れです。
加給年金や子の加算が支給されることを知らなかったと言います。

時効消滅の5年が到来するギリギリで知ることができ、
過去分も遡及して加給年金と子の加算を受け取ることが出来ました。

なぜ加給年金や子の加算の支給もれが発生するのか?

2つの実例を見てきました。

このような場合、知った時点で請求すれば遡及はされますが、
支払の時効があり、5年以上の遡及はされません。
請求しなかった本人の責任とされるのです。

このような漏れを生じさせないように、保険者も世帯の変更がないかの確認を
すべきと思います。その上で、請求をしていなければ、そのとき初めて、
未請求は本人の責任と言えるのではないでしょうか。

制度に熟知していない一般の年金受給者に案内もなく、
請求が遅くなったのは本人の責任とするのはどうかと思います。
このような事例が発生しない仕組みづくりを保険者もすべきと考えます。

まとめ

加給年金、子の加算についてみてきました。

支給要件に合致していれば、支給されて当然と考えますが、
紹介した実例のような支給もれもあります。

今回の実例以外でも、様々なもらい忘れが存在しているのでは
ないでしょうか?

現状では、それらの手続き忘れで支給されなかったのは
本人の責任とされてしまうのです。

時効消滅しない数少ないパターンとして、保険者の事務処理誤りによるものと
過去の年金記録が別の年金番号で判明した場合は時効消滅されません。

今回のような事例によるものも、支給もれを発生させないよう
等級変更や年金額の通知とともにお知らせとして
情報を発するべきではないかと考えます。