年金は将来に備えて保険料を納めていきます。通常は、ある年齢に達すると年金をもらうというイメージですが、病気や事故により障害を負った場合には障害年金が受けられます。その障害年金請求で、クリアしなければならないのが保険料納付要件です。納付要件をクリアして障害年金請求が可能になりますが、保険料納付要件とは?確認していきます。

目次

初診日の前日で納付要件を確認!

納付要件は初診日の前日におこないます。

なぜ初診日の前日?

年金をもらうために、病気や事故の後に保険料を納付するというのは、
将来のためにという年金制度にふさわしくありません。

制度自体が成り立ちません。
他の保険についても同様で、あらかじめ保険給付を受けることがわかっていて
保険料を納付するというのはありえませんよね。

そのため障害年金でも、初診日の前日の時点で納付要件を確認することになっています。

厚生年金・共済年金の年金保険料

厚生年金や共済年金の年金保険料は、毎月の給与から引かれて事業主が
保険料を支払うため、個人で払い忘れや未納というのは考えられません。

厚生年金や共済年金に加入している間は、保険料未納に関しては
気にする必要はないでしょう。

国民年金の年金保険料

国民年金の年金保険料は自分で納付しなければならないため、
うっかり納付するのを忘れていた!なんてことがあります。
保険料を納めるのが厳しいという場合は、次のような免除制度の利用を
おすすめいたします。

国民年金は保険料の納付免除、納付猶予、学生納付特例という制度があります。

納付免除:
所得に応じて、保険料の全額免除・3/4免除・半額免除・1/4免除があり、
全額免除以外は免除分を差し引いた残りの保険料を納めます。
免除分も将来の年金額に反映されます。

納付猶予:
所得により、保険料の納付が猶予されます。
免除と違い将来の年金額に反映されません。

学生納付特例:
学生の期間は国民年金保険料の納付を猶予してくれます。
しかし、学生納付特例も将来の年金額に反映されません。


免除等を希望する場合には申請が必要です。
免除等が認められる所得の範囲内と認められれば免除や猶予となります。
勝手に免除や猶予にはなりませんので、役所にて手続きしてください。
過去2年に遡及して申請は可能です。


法定免除:
生活保護を受けている場合は国民年金保険料は全額免除です。
届出は必要ですので、役所にて手続きをしてください。

障害年金の保険料納付要件

クリアすべき納付要件についてみていきます。
2つの要件のうち、どちらかクリアできればOKです。

3分の2要件

年金保険料を納めるべき期間のうち、3分の2以上の納付がされていること。

全額免除の期間がある場合は、その期間も含めます。
3/4免除・半額免除・1/4免除は免除された残りの保険料が
納付されている場合に納付とカウントされます。

①納付の確認は初診日の前日で!!
②初診日の前々月までの期間で納付要件を確認します。

※保険料納付期限が翌月末のため、初診日の前月はまだ納期限がきていません。
 そのために前々月とします。

初診日以後の保険料納付、免除申請は、当該障害年金請求の
納付要件確認では未納扱いです。
(将来の老齢年金にはカウントされます)



納付要件確認例 その1

初診日の前日までに、保険料を納めるべき期間が30か月あったとします。
3分の2以上納付していれば、障害年金の請求が可能となるので、

30月×2/3=20月 ⇒初診日の前日までに20月以上納付があればOK!


納付要件確認例 その2

初診日の前日までに、保険料を納めるべき期間が200か月あったとします。
3分の2以上納付が、133.333月
この場合に、133月or134月どちらの納付でOKでしょうか?

200月×2/3=133.333月 ⇒初診日の前日までに134月以上納付があればOK!

133月だと納付要件☓で請求できません。

 

直近1年未納なし

初診日の前日において、
初診日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと。

3分の2要件より確認がしやすいので、こちらで納付要件が
クリアできたら3分の2要件は確認の必要がありません。

但し、初診日において65歳未満であること。
法令上、初診日が令和8年3月末日までとされています。


初診日において、65歳以上の場合は要注意です。
この直近1年での納付要件確認はできません。
3分の2要件でのみ確認となります。


”直前1年に未納がないこと”なので、免除(全額免除以外は免除分を
除いて納付していること)や猶予があってもOKです。


納付要件確認例 その3

令和4年8月1日初診日の場合の直近1年の見方

初診日の前々月は令和4年6月です。
直近1年間は、令和3年7月~令和4年6月の12か月で
この間の未納がなければ納付要件はOKです。


直近1年のみ、きちんと保険料を納付していた。
それまでは、未納であった・・・
こんな場合でも、障害年金請求に関しては納付要件OKです。
(将来の老齢年金については12か月ではもらえません)

こんな場合はどうなるの?

3分の2要件と直近1年要件の2つをみてきました。

保険料の納付要件を確認するときに、
悩ましい例に遭遇することがあります。

こんな場合どうなるの・・・?

60歳以降に年金加入がなく、61歳で初診日がある場合

国民年金加入者は60歳で保険料納付が終了します。
61歳の時に初診日がある場合に保険料納付要件はどのように
確認するのでしょうか?

初診日の前々月に被保険者期間(保険料を納める期間)がありません。
この場合は、60歳の年金加入が終了した時で納付要件を確認します。

※日本国内に住んでいる60歳~65歳未満の方

59歳~60歳までの1年間に未納がなければ直近1年はOKです。
未納期間がある場合は、3分の2要件で確認します。


60歳以降に国民年金に任意加入した場合

60歳で国民年金期間が終了したした人が、将来の年金を増やしたいと
国民年金に任意加入することができます。

その任意加入している途中で、初診日がある場合の納付要件の確認は
どうなるでしょうか?

例:

令和3年3月で60歳になった方で、令和3年8月から国民年金の任意加入して
その後、令和3年12月に初診日がある場合の納付要件確認をしてみます。

先ほどの例でみると、任意加入がなければ令和2年4月~令和3年3月の
直近1年で納付要件を確認しますが、

令和3年8月に任意加入しているので、
この例では、令和2年11月~令和3年10月の直近1年間で確認します。
令和2年11月~令和3年7月は年金加入がありません。
令和3年8月~令和3年10月の3か月で未納がなければ納付要件はOKです。


平成3年3月までに、学生の期間がある場合

平成3年3月までは、20歳以上でも学生の場合は国民年金の加入義務は
ありませんでした。

平成3年3月に22歳で大学を卒業した方で、
4月から会社の厚生年金加入、同年7月に初診日がある場合の納付要件は
どうなるでしょうか?

直近1年の期間は、平成2年6月~平成3年5月です。
平成2年6月~平成3年3月までは年金の加入はありません。
そのため、直近1年のうち年金の未加入期間を除いた期間で納付要件を確認します。

この場合は、平成3年4月~平成3年5月の2か月に未納がなければOK。
4月から厚生年金加入なので未納はなく、納付要件はOKです。

まとめ

障害年金を請求するための保険料納付要件をみてきました。

大半は納付要件は問題なくクリアして請求へとすすむ
パターンが多いです。

しかし、納付要件をクリアすることができず請求ができなかった!
障害年金に該当すると思われるほど状態は重いのに・・・
非常に残念ですが、このようなケースも実際にあります。

足りなかったら納付すればよい、と考えますが、
初診日の前日における納付要件を確認いたしますので、
初診日後の納付は障害年金請求では未納とされます。

よくあるのが、会社を退職して厚生年金から国民年金の
加入の手続きをしていないケースです。

どうせ、次の会社で厚生年金加入するからその間は別にいいや!
その後、病気で障害年金を考えたが納付要件が☓で請求できなかった。

あの時しておけばよかった・・・と後悔しないように、
国民年金加入を忘れず、保険料を納付することが厳しい場合は
免除申請を一緒にされることをおすすめします。